不織布の基礎知識

不織布は、「布」と「紙」の中間に位置する素材です。
不織布の性能は
1、原料
2、製法
3、加工
によって決まり、それらの組み合わせによって「厚さ」「柔らかさ」「対薬品性」「通気性」「耐磨耗性」「弾力性」「屈曲性」などの特徴を出し、使用用途に合わせた不織布がつくられております。ここでは医療用不織布に絞ってその製法等についてご紹介していきたいと思います。

医療用不織布の製法

医療現場の感染対策として不織布が使用されるようになってから既に30年以上が経過する現在では、使用用途も拡大し、あらゆる場面で不織布が使われております。 それに応じてバリエーションや製法も進化し続けています。

名称 スパンレース法
製法 高圧の水をノズルによりウェブ(綿状になった繊維)に噴射して、繊維間を水流で交絡させる製法
特徴 目が細かい
布に近い風合いを持つ
主な用途 手術用ドレープ
手術用ガウン
名称 メルトブローン法
製法 溶解させた素材をノズルより押し出す際に高温のエアーで吹き飛ばしたものを捕集してウェブとする製法
特徴 目が細かい
強度が低い
主な用途 手術用ドレープ・フィルター
手術用ガウン
名称 SMS(Spunbonded-Meltblown-Spunbond)
製法 スパンボンド(強度が高い)とメルトブローン(バリアー性が高い)を組み合わせた、1枚のシートとする製法
特徴 スパンボンド、メルトブローンの特徴に準じる 主な用途 手術用ドレープ・クルム
手術用ガウン
名称 フラッシュスパン法
製法 フラッシュとは液体の急激なガス化現象のこと。スパンボンドの製法はこのガス化現象を応用することによって、極細で網状の連続繊維を作ることができる
特徴 軽い
強度が高い
発塵が少ない
主な用途 手術用ドレープ
手術用ガウン

医療用不織布の試験方法

医療用不織布には共通の試験項目があり、厳しい審査のもとで素材選定されます。その際に一番重要視されるのは、評価のバランスです。最終製品の使用用途によって、望まれる風合いや安全性は異なるため、全ての評価が最高値を示している必要はありません。

試験項 試験基準 試験方法 評価
引張り強度 JIS L 1912 試験片を用意し、試験装置に固定し、定速で引っ張り切断したときの最大強度を測定する。 数値が高いほど、
破断の可能性が少ない
引裂き強度 JIS L 1912 試験片(短辺)を用意し、その中央に切れ目を入れる。その切れ目の両端をつまみ、定速で引っ張り切断したときの最大荷重を測定する。 数値が高いほど、
破断の可能性が少ない
撥水度 JIS L 1912 試験片を傾斜した台に固定し、15cmの高さから250mlの水を散布する。散布後の試験片の表面状態を観察し、目視にて5点~1点の範囲で判定する。 数値(点数)が高いほうが撥水性が高い
撥アルコール性 JIS L 1912 試験片の上にアルコール水溶液をたらし、5分放置後、裏面より観察して水溶液の浸透を見る。濃度の違う水溶液で測定を繰り返し、浸透しなかった最大濃度を撥アルコールの点数とする。 数値(点数)が高いほうが撥アルコール性が高い
耐水性 JIS L 1912 専用試験装置にて、試験片に水圧をかけ、試験片の3箇所より水が出た時の水位を測定する。 数値が高いほど水に対するバリアー性が高い
柔軟性 JIS L 1912 試験片を傾斜のついた測定装置にて滑らせ、先端が傾斜に到達したときの移動距離を測定する。 数値が低いほど柔軟性が高い
通気性 JIS L 1912 試験片に一定の圧力をかけ、その時に試験片を通過する空気量を算出する。 数値が高いほど通気性が高い

医療用不織布に求められること

医療現場で使用される不織布には院内感染対策の観点から、最適な原料と製法の組合せを求めていく上で、以下の点が欠かせない性能だとホギメディカルでは考えております。

菌の防壁材となるもの

(1)撥水性または防水性
(2)高密度メッシュ
(3)通気性
(4)引張・引裂強度
(5)縫い目の強さ
(6)柔軟性
(7)軽量
(8)リントフリー
(9)無害性
(10)容易な廃棄処分

吸水性を目的としたもの

(1)吸水スピードが速い
(2)吸水量が多い
(3)無害性
(4)柔軟性
(5)リントフリー
(6)湿潤強度が強い
(7)容易な廃棄処分

AAMI

AAMI(エイミー)とは米国医療機器振興協会の略(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)で医療機器の適切な使用方法の理解を高めることを目的とした米国の機関です。同機関では適正使用(安全性の基準や、性能の基準)を定めており、その基準のひとつに「ドレープ、ガウン、その他防護服類のバリア性を4段階で測る基準」があります。近年、この基準により製品を評価いただくことで、業界統一の基準として機能しつつあります。

ホギメディカルの医療用不織布

ホギメディカルでは、医療用に求められる数々の適正(医療用不織布について参照)をクリアした素材を採用し、多品種の製品づくりでお客様のご要望に応えております。また、ドレープに関しては、進歩する手術手技または、お客様の使用方法に合わせて開創部の位置や大きさ、ドレープ全体の大きさなどカスタマイズすることをモットーとしており、お客様とご相談しながら製品づくりを進めております。

着装品 手術用ガウン、キャップ、マスク、エプロン、アンダーウェアー、アイソレーションガウン、患者着、スタッフジャンパー、ワークウェア
ドレープ
カバー類
ドレープ、メイヨスタンドカバー、アームカバー、シーツ類、イメージカバー、器械台カバー、レギンスカバー
その他 クルム、タオル

装着ガイド

不織布の安全性を最大限に生かすため正しい装着方法にて製品をご使用いただきますよう、推奨手順をまとめておりますので是非ご参照下さい。

ガウン装着ガイド

PDF

監修 東京医療保健大学大学院
感染制御学 教授 大久保 憲 先生
POINT 清潔操作を行いやすいクローズド法をご紹介します。
ベルトガイド操作時に介助者と触れないように操作を行うことがポイントです。アンダーウェア上着の裾はズボンの中に入れて下さい。
PDF メッキンガウン装着ガイド

キャップ・マスク装着ガイド

PDF

監修 東京医療保健大学大学院
感染制御学 教授 大久保 憲 先生
POINT キャップ:なるべく髪の毛を覆うように装着し、術野に覆いかぶさる術式では完全にカバーできるタイプを装着します。
マスク:呼気、吸気がなるべくフィルターを通るように顔にフィットさせて装着することがポイントです。
PDF キャップ・マスク装着ガイド

手術用グローブ装着ガイド

PDF

監修 東京医療保健大学大学院
感染制御学 教授 大久保 憲 先生
POINT 一人で清潔操作を行いやすいクローズド法をご紹介します。
PDF 手術用グローブ装着ガイド

プリコーションセット着衣・脱衣ガイド

PDF

監修 株式会社ホギメディカル
POINT 安全に着脱できる方法をご紹介します。
PDF プリコーションセット着衣・脱衣ガイド